死んだら遺骨を鉢に埋めてくれと言う父親の言う通りにしてみたら、その鉢に植えた痩せ細った木がぐんぐん成長し、その木から父の声が聞こえてきたり、海に落ち死んだはずの主人公が「汎(はん)宇宙生物研究協会」に所属する宇宙人に生き返らせてもらったり。
ある朝突然、彼氏の右手がブロッコリーになったり、死んだ恋人が彼の切った爪に憑依して幽霊になって現れたりと、イ・ユリの作品は突飛な現象が起きるが、それが自分の心の声を聴くように響いてきて、違和感なく読めるだけでなく、こういうことあっても不思議でないような気持にさせる。
中でも印象に残ったのは、死んだ彼が幽霊となって現れる話だ。
死んだ彼が幽霊になって彼女の前に現れた時には、彼女はすでに結婚していて、夫は亡くなった妻の恋人が現れたのを見てとまどい、帰ってもらえませんかと幽霊に頼むが、幽霊も彼女が結婚したことを知り帰ろうと思ったが帰る方法がわからないと言う。夫はどうして良いかわからず、とりあえず二人を置いて出社する。
その間に、幽霊になった彼と彼女は一緒に食事をしながら、お互いのことを話す。彼女は彼の質問に答えて、彼が死んだ直後はずっと泣き続けたこと、彼が乗って交通事故死したバスでなく飛行機にすればよかったなどと色々と後悔したこと、泣いて泣いて涙腺に炎症が起きて病院へ行ったこと、死んだ彼が夢にも出てきたこと、会いたくて会いたくて死んだ彼を恨んだこと、それでも今の夫と友達の紹介で会って結婚したこと、死んだ彼にも行きたいと言っていたことは忘れて新婚旅行にモルディブに行ったこと(その間楽しくて彼のことは一切忘れていた。そして今は、昔は全て知っていた亡くなった彼の色々なことを忘れていること→彼には言わない)・・・・・などを話す。死んだ彼は、恨むことなく、彼女が生きていてよかったと答える。
会社から戻った夫の提案で、死んだ彼の交通事故の現場へ行くことになる。そこで彼の姿は消え、古くなって黄色く変色した爪だけが残った。帰りの車の中で彼女はこの事故現場へ当時死ぬために行ったことを思い出しつつ、おしりと腰のあたりから何かがすーとぬけていくのを感じる。
これは、割り切れない未消化な彼の死について、彼と彼女が再会し、お互いの気持ちを話して、話して、消化し腑に落ちる話だと思った。モーニングワーク(喪の作業)を行った話だろう。死んだ彼を恨み、悲しみ、一方で新たな幸せを手にし今を生きている彼女と、残した彼女に心が残りあの世へ行けなかった彼の喪の作業が行われた話だと思った。ストーリーはフィクションでも人の心の描写はすごくリアルに伝わってきた。
